【令和6(2024)年度版】はじめての報酬改定・制度改正

報酬改定・制度改正とは

《なぜ報酬や基準が3年ごとに変わるのか》
障害者総合支援法の前身である障害者自立支援法は2006年に施行されました。それから現在まで、就労や地域生活におけるニーズの変化、医療的ケアの必要性など、障害のある人を取り巻く支援課題は変わり続けています。また事業所運営や職員を取り巻く課題も同様です。このような変化に合わせるため、事業の報酬体系や指定基準などは定期的に見直され続けてきました。見直しの頻度は3年ごとですが、必要に応じて臨時で実施されることもあります。

報酬改定・制度改正の流れ

報酬改定・制度改正は、大きく以下のような流れで進みます。なお表に出てくる用語については、表の後、解説します。

時期 内容
5月~翌2月頃

法制度全体…社会保障審議会(障害者部会)での検討
具体的内容…障害福祉サービス等報酬改定検討チームでの検討

▼令和6(2024)年度に向けてのスケジュール
令和5(2023)年5月
・報酬改定検討チームから今後の予定や検討の進め方が出される
7~8月
・関係団体へのヒアリング(6回程度)
8月
・ヒアリングの意見まとめ、論点整理
9~10月
・各サービスの報酬などの在り方を検討
11月
・サービス横断的な報酬などの在り方を検討
12月
・報酬や基準に関する基本的な考え方の整理、取りまとめ
令和6(2024)年2月
・報酬改定案のとりまとめ

2月頃 パブリック・コメントでの意見募集
3月上旬頃 官報による周知
3月上旬頃 厚生労働省から各指定権者(指定の権限を持つ自治体)へ周知
3月中旬頃 指定権者から事業所へ周知
3月下旬頃 厚生労働省から解釈通知が示される
3月下旬以降 厚生労働省からQ&Aが示される

《用語解説》
社会保障審議会(障害者部会)
社会保障制度のうち障害福祉に関する部分を調査審議しているのが、社会保障審議会の障害者部会です。障害者総合支援法をはじめとする法・制度については、ここでの意見をもとに具体的な議論が進められます。
障害福祉サービス等報酬改定検討チーム
報酬改定検討チームでは、社会保障審議会(障害者部会)の意見や関係団体からのヒアリング内容をもとに、報酬や基準などの具体的な改定内容を固めていきます。なお社会保障審議会(障害者部会)や報酬改定検討チームの開催日程や関連資料、議事録は、厚生労働省のWebサイトで公開されます。また議論の様子はYouTube配信の視聴や会場での傍聴ができます。いち早く情報を得たい場合にはチェックするといいでしょう。
パブリック・コメントによる意見募集
パブリック・コメントは、政令や省令などを決める前にあらかじめその案を公表し、国民から意見、情報を募集する制度です。障害福祉サービスなどの報酬や基準を改定する際も、事前に改正案が公表され、意見が募集されます。またその結果(意見と回答)も公表されます。
官報による周知
官報は法律や政令などの制定・改正の情報が掲載される国の機関紙で、インターネット上でも閲覧できます。報酬改定・制度改正の際も、最も早く正確な内容を知りたいときは官報を確認することになりますが、慣れない人には見づらいかもしれません。
〇厚生労働省から各指定権者への周知
厚生労働省から各指定権者には3月上旬頃に周知されます。各指定権者はこのタイミングで正式に改定内容を受け取ります。
〇指定権者から各事業所への周知
指定権者から事業所への周知は、場合によっては3月末になることもあります。3月に集団指導を開催して伝える、Webサイトに掲出するなど周知の方法はさまざまです。指定権者の案内を見逃さないようにしてください。
〇解釈通知、Q&A
報酬や基準は厚生労働省の省令や告示として定められます。それらの内容をさらに具体的に説明するのが「解釈通知」です。また報酬改定・制度改正からしばらくは指定権者も解釈や判断に迷うため、各指定権者から厚生労働省への問い合わせが発生します。その事例をまとめたものが事務連絡として出される「Q&A」です。

報酬改定・制度改正に備える

報酬改定・制度改正は、その内容によっては事業に大きな影響を与えます。そのため3月の指定権者からの周知を待ってからの対応では、事業運営に支障をきたす場合が考えられます。事業所としてどのような備えができるか、以下紹介します。

経営への影響を見極めるため早めに情報を収集する
事業の基本報酬や加算減算に変更・新設があると、収益はもちろんのこと、職員の配置やサービス内容、日々のオペレーションにも影響します。改定内容を早めに把握して次年度の見通しが立てられるようにすることが第一です。情報が確定するのは3月ですが、方向性は12月頃、概ねの内容は2月頃に、厚生労働省の報酬改定検討チームのWebサイトに掲載される資料で把握することができます。特に新たな加算が創設されるときは、算定のための対応コストと得られる額を比較して算定するかどうか判断することになります。要件を満たせるか、満たすには何が必要かなど、事前に情報収集をしておくことをお勧めします。

実態に合った改定とするため障害福祉サービス等経営実態調査に協力する
「障害福祉サービス等経営実態調査」は事業所の経営状況を把握するものです。この調査で回答した内容が、社会保障審議会(障害者部会)や障害福祉サービス等報酬改定検討チームが使用する大切な検討資料になります。「障害福祉サービス等経営実態調査」が事業所に届いた場合は、事業所の実態を正しく伝えるためにも可能な限り協力してください。

パブリック・コメントに改定案に対する意見を出す
パブリック・コメントは、国民が省令や告示に対して意見を述べられる数少ない機会です。パブリック・コメントに寄せられた意見が実際に解釈に影響を及ぼした例もありますので、基準や報酬に関する改正内容に疑問や懸念があれば意見を出してください。

最後に……

基準や報酬に関する改定は上記の通り手順が決まっています。その流れを把握しておくと、基準や報酬の変化に対応した運営ができます。また国が障害福祉に関して何を課題として何を求めているかを理解することは、国や利用者のニーズに合った事業運営の助けになります。

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