(1)移動支援事業と同行援護
●ガイドヘルパーによる移動支援事業
2006 年 4 月
障害者自立支援法施行時、支援費制度における移動支援事業から引き継ぎ
区分:地域生活支援事業における移動支援
市町村の創意工夫によって実施
●同行援護制度 2011 年 10 月
2011 年 10 月
障害者自立支援法の改正により、重度視覚障害者の移動支援サービスとして創設
区分:自立支援給付における介護給付
国の制度として全国一律のシステム
*ただし、同行援護の創設により、従来の移動支援事業がなくなるわけではありません。従来行われていた移動支援事業で、同行援護の対象にならないものはこれまで通り継続されます。
(2)同行援護の対象者
法律において、「視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等」と定められています。視覚障害の身体障害者手帳を所持している者、または同程度の障害のある児童であることが前提となります。同行援護の支給決定は、同行援護アセスメント調査票に基づき最終的に市町村が行います。
(3)同行援護の業務内容
「視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護その他の厚生労働省令で定める便宜を供与することをいう」(第 5 条第 4 項)とされています。同行援護のサービスの内容は、以下の三つになります。
- 移動時およびそれに伴う外出先において必要な視覚的情報の提供(代筆・代読を含む)
- 移動時およびそれに伴う外出先において必要な移動の援護
- 排泄・食事等の介護その他外出する際に必要となる援助
〇従来の移動支援事業と大きく異なる点は、以下の通りです。
主な業務内容:外出支援の「介護」
- 代読・代筆が含まれていない
- コミュニケーション支援が含まれるか不透明
- 利用内容や目的地に柔軟性がない
主な業務内容:移動に必要な視覚情報を提供する
- 代読・代筆
- 情報処理
- コミュニケーション支援
(4)同行援護従業者にお願いできないこと
- 通勤、営業活動など経済活動にかかわる外出
- 長年かつ長期にわたる外出
- 社会通念上適当でない外出
*同行援護の対象は外出支援のみとなっています。居宅内における家事や介護などの支援を必要とする場合は、別に居宅介護のサービスを利用することになります。
・同行援護従業者にお願いできること Q&A
Q. 同行援護ではどのような利用が認められますか?
A. 仕事以外の日常的な外出については、社会参加や余暇活動についても基本的に認められます。
Q. 通勤、通学は同行援護の対象になりますか?
A. 通勤、通学、グループ支援などは、同行援護事業に含まれません。ただし、これまで各市町村でこれらのサービスが認められていた場合は、引き続き移動支援事業としての利用になります。
Q. 日常的な買い物が「通年かつ長期」とされて利用できないことはないのですか?
A. 日常生活をするための買い物に関しては、利用可能です。また、社会参加や余暇活動のための定期的な利用も認められています。
Q. 日曜礼拝や選挙投票に利用することはできますか?
A. 一市民としてのお墓参りや日曜礼拝、選挙演説の傍聴などは利用可能です。選挙投票のための利用を認めていない自治体もあったようですが、こうした対応は適切ではないと考えられます。ただし、特定の宗教を普及する活動や特定の政党を指示する活動は同行援護の対象外となります。
Q. 同行援護を利用して通院することは可能ですか。また、同行援護で通院する場合、院内は付き添ってもらえるのでしょうか。
A. 同行援護を利用して通院することは可能です。院内でも利用できます。同行援護制度は視覚障害者への情報提供を主たる目的としているので、病院における情報の提供も含まれています。しかし現段階では、通院の際に移動支援の通院介助を使うように指導する市町村も多いようです。今後、視覚障害への情報提供を専門としている同行援護の利用を認めてもらえるように働きかけていく必要があります。
Q. 外出先での代筆代読は、同行援護で利用できますか?
A. 公的機関、会議、通院などの際に利用が可能です。外出先での必要書類への代筆、資料の代読、待ち時間に周囲の状況を伝えるなどの情報提供が、同行援護従業者の業務として明確にされました。
Q. どのような内容でも、代筆は可能ですか?
A. 基本的には可能ですが、不動産売買や株式投資などの財産に関することや、手術の同意書などの命に関わるような内容は対象外です。
Q. 自宅内での代筆代読も支援の内容に含まれるのでしょうか?
A. 同行援護は移動時及び外出先が対象ですので、自宅での利用はできません。ただし、自宅での代筆代読は、通常の業務を圧迫しない程度であれば、居宅介護サービス(ホームヘルパー)で利用することが可能です。
Q. 宿泊の場合でも、同行援護は利用できるのでしょうか?
A. 一日の利用をいったん終了すれば次の日には利用可能です。一日単位の稼働時間を明確に終了させることによって、宿泊の場合でも連続して使うこができます。
Q. 自宅が発着になるのでしょうか?
A. 同行援護においては、利用計画等に記載の上で事業者と利用者の合意があれば、サービスの開始、終了地点は自宅でなくても構いません。
Q. 利用時間(支給量)に制限はありますか?
A. 月の利用時間数は利用者のニーズを勘案の上、決定します。
Q. 介護保険のサービスを受けながら、同行援護も利用できるのでしょうか?
A. 同行援護は、介護保険のサービスにはありません。同行援護では視覚情報の提供が主であり、介護保険の支援内容とは質的に異な、たとえ介護保険の利用者であっても利用可能であり、優先関係の対象となりません。
Q. 散歩も同行援護で利用可能ですか?
A. 介護保険で散歩が可能な場合もありますが、同行援護での利用も可能です。
- 公的機関、銀行等への外出
- 通院(病院内を含む)
- 日常生活での買い物
- 冠婚葬祭
- 墓参り
- 余暇活動・スポーツ
- 会議、研修
- 特定の政党を指示する活動
- 宗教の布教、勧誘活動
- 通勤、通学
- 営業、宣伝等の営利、経済活動
- 財産に関わる資料の代筆
- 手術の同意書等生命に関わる資料の代筆
- 反社会的な活動
- 金銭の貸し借り
- 個別的な関係をもつ
- 医療行為の依頼