不安は、「対象のない恐れの感情」と定義されます。似たような言葉に「恐怖」がありますが、こちらは「対象がある場合」に用います(区別しない場合もあります)。不安は身体症状を伴っていて、「どきどきする」(動悸)というのもそのひとつですが、ほかにも「胸がしめつけられる」「息が苦しい」「冷汗が出る」「体が震える」「ふらふらする(めまい感)」「手足のしびれ」「脱力感」「頻尿」「のどが渇く」「眠れない」「頭痛」など、さまざまな症状が現れます。
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これらは主として、自律神経、特に交感神経の働きによるものです。感情と、交感神経、副交感神経などの自律神経の働きは、脳の中で密接に関連しています。
不安にはいろいろな種類があります。
急性、突発性の強い不安をパニック(繰り返す場合はパニック発作)といいます(不安発作ともいう)。
「パニック障害」で典型的にみられる不安症状で、突然理由もなく強い不安に襲われ、胸がどきどきする(動悸)、脈が速くなる(頻脈)、胸苦しさ、息苦しさ、めまいなど、上に述べた身体症状も同時に襲ってきて、今にも死んでしまうのではないかと思うほどです。
ただし、時間がたつと自然に消えてしまいます。
発作が繰り返される場合は、「また来るのではないか」という不安が生じ(予期不安という)、そのため発作が起きた時そこから逃げられない、助けてもらえないような場所や状況を恐れ避ける「広場恐怖」という症状が伴ってきます。
これは「恐怖症」という不安障害の一種にあたります。
恐怖症には、ほかに「社交恐怖(人前で異常に緊張し、恥をかくことを恐れる)」「特定の恐怖症(高所、閉所、動物、暗闇など、特定の対象や状況を異常に恐れる)」があります。
パニック発作とは対照的に、それほど強くない不安が慢性的に続くタイプの不安症状もあり、全般性不安といいます。
そのほか強迫性障害、PTSDなども不安障害に属する精神疾患で、それぞれ特徴的な不安症状が現れます。
不安障害は不安を主症状とする精神疾患のグループで、パニック障害がその代表的なものですが、上に挙げたもののほかに、不安障害の中には一般身体疾患や物質などが原因で起きる疾患もあります。
原因となる一般身体疾患は、甲状腺機能亢進症や低血糖などの内分泌疾患、心不全、杯塞栓症、不整脈、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの心血管系・呼吸器系疾患、前庭機能不全、脳炎などの神経系疾患などで、原因となる物質はカフェインや覚せい剤その他違法薬物の中毒、アルコールや医療で投薬された鎮静剤、睡眠薬、抗不安薬などを急にやめた時に生じる離脱症状などです。
これらは、見かけは不安という精神症状でも、原因は身体疾患や物質によるものですから、きちんと審査・診断してもらうことが大切です。場合によっては、直接命に関わってくるからです。
医師を受診したときは、薬物を摂取していた場合は、必ず報告してください。
不安症状を呈する精神疾患は、不安障害のほかにもたくさんあります。不安症状のない精神疾患はないと言ってもいいです。中でも、うつ病や統合失調症では、不安が主症状えある場合もあります。
うつ病ではしばいば焦燥(いらいら、あせり)、苦悶(苦しい)、罪責感、絶望感などが、うつ症状と混じり合った形で現れます。
統合失調症では、妄想気分、被害妄想、幻聴など、特有の精神病症状に伴う不気味で深刻な不安感が体験されます。
そのほか、心気症(身体表現性障害)では、体や病気に対する過剰な不安がみられます。
ストレスに対する反応である「適応障害」では、不安症状はうつ症状とともに、最もありふれた症状です。
また、子供に特有の不安障害として、親や愛着のある人から引き離されることへの強い不安を示す「分離不安障害」があります。
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